クライヴとジルの関係と。
作中から伝わるジルの表情から。
クライヴの愛情表現はジョシュアとジルでは大きく異なりますね。
もちろん自身の根底となっている血の繋がった弟と、成長期に出会い家族(きょうだい)の間柄となって後にひとりの女性として特別な人となった相手では向ける感情が違うのはもっともなことです。
ジョシュアに対しては率直に言葉にし名を叫んだり再会出来た時はこんなに嬉しいことはないと感情豊かに見せるのに対し、ジルに対しては気を遣っているというか“好き”と終盤で言葉にする彼女に対しクライヴは最終盤の愛しているよのみで途中まで好きと言葉にはしていない。
これはジルが本来の優しく愛情深い人物だったのを知っていて彼女が心を凍らせるほどの劣悪な状況にいた為、そうそう軽々しく口にするものではないと判断しているからなのだと(その反動なのか結構行動では示しています)だからこそ、影の海岸での彼の彼女への誓いが生きてくる。
ジョシュアの方では自分の為に動いてくれていたと青年期に判明したので、拠点のリーダーとして動きながら自分と弟の絆と誓いを事あるごとに思い起こし。
円を描くように誓いに忠実であろうと彼の生き方そのもので貫こうとしていた。これもまた、最終盤での炎の民に繋がる描き方です。
クライヴがジルに見せていない(ジルが踏み込めない)本質はジョシュアだけが踏み込んで確立出来るもの。きょうだいの誓いと絆はヴァリスゼアの舞台をリセットさせていきました。ジルは踏み込めないからこそ外側から“あなたはあなたなのよ”と伝えるしか出来なかったのでしょうね。
クライヴとジルは対であり、対等である。でもお互いに相手の中に自分を見出す寄り添い方はしていない。
むしろ人として立ち上がろうと最後まで必死に抗い続けた。
そしてお互いに支え合い補い合って生きているふたりが大好きなのです。
・ふたりの距離感
少年期にジルちゃんを引き寄せるのを引っ込めていたクライヴですが。
この時には弟への後ろめたさが上回っていたからだと分かります。
アナベラ(実の母親)に愛されて来なかったのも含めて、振り返ったジョシュアが寂しそうに兄を見て、ジルがじっと彼を見つめるカットシーン。
思春期に入っていたのも合わせてジルに対して妹として接する以上の感情はある。それでいて弟は兄さんが受け継ぐべきだったと自分に向けてくる感情含めてどうにもならない現実を受け止めながら(少年期はクライヴは受け止めてジョシュアは兄の言葉から受け入れて父親の死を目の当たりにして激昂のままに顕現していますが皆を守ると兄と約束したと戦いに向かう、受け入れる選択を取っていたと分かります)為すべきことを為さなければジルに何か伝えることは出来ないとそう考えていたのが伝わってきます。
それらがすべて崩れて離れ離れになり、再会出来てからはシドにジルを任せると青年期初期は自分の行なっていることが正しいことだとは思っていない距離を置いた言動。
結局全てが崩れてからシドに諭され自分の想いに(元から素直な性格ではある)正直にそれでいて元々人そのものを見つめるという本質も合わせて彼女をまっすぐ抱きしめた後、大切なのだと接していくことになります。
ジルは兵器として扱われた年数がロザリアで過ごした時より長かったのでクライヴへの想いを奥底にしまいこんだまま、心も凍らせたままだったのであの時の自分は彼に対してこうしていた、こう言っていたと思い起こしながらの言動。ロザリアにジルと共に帰って来たとスリーリーズ湿地に辿り着いたばかりのクライヴは懐かしい思い出と共に変わっていないとそう語るのです。
ジルはそうではないと、クライヴも自分も兵として扱われて来たからその苦しみや辛さは分かる、戦えない自分が戦えるようになった、同じドミナントなのだから分かち合えるとあの頃の自分は心が凍り付いた時にいなくなった旨を語ります。過去の優しいだけ、朗らかさだけではこの世界はやっていけないのだと辛い現実を持って知ったとも。
実際の彼女はクライヴの傍にいたいという想いが中心にあるのでふたりが5年間向き合わなければならないヴァリスゼアの現状―現実を受け止めながら拠点の皆を立ちなおらせるのを含めて必死であったでしょう。
その度にフェニックスゲートで語り合ったすれ違いがあるとはいえ、ぶつかり合い仲たがいするよりシドの前で誓った時と同じ様に手を取り合いながらお互いの想いを確かめ合っていたのでしょうね。
距離感が幼なじみとはいえ再会してからずっとかなり近いふたりですが、離れていた期間が長かったのと人としてもまともに扱われて来なかったことを含めてお互いにあるものへもっと目を向けるようになっている。
混沌とした情勢へ向かうヴァリスゼアの中で互いにあるものを輝かせて向き合い見つけていこうと相手への尊厳、ちょっとした仕草や視線の運びからそれが伝わってくるふたりであります。
この辺りはジョシュアも同じで、彼の方はもっと俯瞰した見方をしています。
冷静であり、どこか自分に対しても引いた姿勢。だからこそ兄の傍にいると負けず嫌いな姿勢を見せたり時には彼女の代わりに怒ったりして切磋琢磨出来る兄弟の関係を築いているのだと。
・クライヴの精神世界
少女のジルに父親であるエルウィン大公と共に否定されるのですが。
ジルが大人の姿では否定していないのには意味があるのでしょうか。
もっともクライヴにとって影の海岸にてうれし涙を流して笑顔を浮かべていたジルの表情は少女時代の彼女と同じで彼もそれに気づいていたので大きな違いはないのかもしれません。どちらも彼女そのものであると。
彼女そのものには否定されても、弟は少年姿でも青年姿でも兄の名を呼び確立させているのでやはりクライヴの核となっているのはそこなのだと。
あくまで彼が彼女へ向ける愛は彼そのものが人を人として目を向けるという本質を別にすれば個人的な愛情なのでしょうね。
・本質から惹かれた女性
ジルの場合はクライヴの本質、自分を含めてそのひとそのものへ目を向けてくれるのだとそこに惹かれているのが良く分かります。彼女は怒っている時もあるのでしょうがそれを飲み込んでも彼の傍にいたいと願う。
自分を見失わないでいられるという意味でも。彼女のターニングポイントは幾つかあってカットシーンに出ている本編の筋からですとイーストプールでの語り合い、鉄王国突入辺りとジョシュアとの再会、影の海岸辺りになりますでしょうか。それらが印象深いと思われます。
それとは別にタイタン戦後の待っているだけは辛いからとぽつりと彼女は告げますよね。私はここが重要なのだとそう考えています(世界観のことを合わせると今作NPCの台詞はかなり重要ですね)
ジルがすぐ我慢してしまうことは終盤サイドクエスト白銀の君にて兄弟のやり取りにも出て来ます。
因縁を断ってからジルはクライヴへの恋愛感情もはっきり自覚し。一緒にロザリスについていくと啖呵を切った矢先フーゴに捕らえられ結局足を引っ張ってしまいまた引っ込める姿勢になった訳です。
下手に自分が感情を露わにして動こうとすると彼の役に立てないのだと。
クライヴは傍にいてくれるだけでなくどんな形であれ彼女が支えてくれること自体に感謝しているのですが。
彼女自身がそれだけでは納得できないのだと。
人らしくなってから好きになれば好きになるほど不安は募る。本編では大きく描かれていませんが力の差も開いていくので。
その決定打はバルナバスに捕らえられた時。もうこれ以上は傍にいても役には立てないと。
それでもクライヴが、彼本人が変わらないでそして自分に対しての愛は大きく変わっていったのだと我慢することになっても彼の愛と決意を受け入れる選択を最終的に取って行ったのでしょうね。
FF16は目線や表情から語りそしてプレイヤーのゲーム体感として心の内から感動を呼び起こすことに重きを置いています。
ここではジルの表情から例を挙げていきます。
少年期に大公の元へ行こうと扉の前で別れる時にトルガルのおててを持って振りながら“頑張って”と励ましてくれる笑顔と。
影の海岸で“君に誓うよ”と語るクライヴの決意を涙流しながらも微笑んで受け入れた時と、エピローグにてメティアへの願いは叶わなかったと泣き崩れた後、トルガルが彼を呼ぶ為にここにいるのだと吠えてクライヴが自ら誓いを果たしてくれたと気づきそして青空を見上げて喜び涙を流した時へと繋がっています。
オリフレム突入時に歓楽街でベアラーとドミナントの現状と大罪人として名を残すことになると語るシドがその重さを受け止めるジルに対し、彼らしいジョークで“美人が睨むと迫力があるな”と返します。
彼女のこの鋭い表情は壮年期初期、クライヴの拠点にてマザークリスタルは人を幸せにしないとはっきりと告げてクライヴ自身はまだ訪れていない鉄王国のことも頭にあったので(シドに話された時も同じかと)オットーが入って来てふたりきりの時に邪魔をしたようですまないと伝えた時そうした意味合いに関して反応が鈍かったのだと。
バイロン叔父さんの屋敷を訪れ本当に久しぶりの再会となった際に叔父さんが“お前は嘘をつく時の癖がある”とクライヴに話す場面、プレイヤーには叔父さんなりの照れ隠しでありからかっているジョークだと分かりますが。
真面目なクライヴとジルにはこれが冗談だと分からず、クライヴは咄嗟にジルの方を向いてそうなのかと彼女に確かめます。それだけ彼女が傍にいてくれる人だと信頼感を持っていて彼女が自分を良く見てくれていると認識している。
ジルは戸惑った顔をしており“叔父様は私が知らないクライヴの癖をご存知なのね”と頭の隅に置くようになります。
アナベラがまるで獣のようだとバイロンが語り再び鉄王国への因縁へと目を向ける為、クライヴの傍にいたいと心情を吐露します。
プレイヤーにとってもジルのこの反応は隅っこには置かれることになる。
オリジンへ最終決戦に向かう時に泣きだしたジルはクライヴの嘘をつく時の癖はこれではないのかと(彼はそれまで好きだと言葉にはせずどちらかと言えば行ないで好意を示してきたのに対しここではっきりと“愛しているよ”と告げ。彼女ははぐらかしている、トルガルにジルを頼むよと告げて別れを告げているように受け取ってしまった)思い込み、結果として少女時代と変わらずメティアに祈りを捧げながら待つようになります。
EDでメティアが曇り泣き崩れた彼女からジルは祈ることを変わらず続けていたと分かります。
メティアに拘っていたことは少女時代の祈りの内容が彼の無事を祈っており。
引き離され自分は獣なのだと自嘲する程むごい兵器扱いされた13年間、心も限界を迎えた頃にクライヴと再会し彼が生きていて願いが叶ったのだと青年期にノースリーチで語ったことからも分かります。離れ離れの間も忘れられないひとときであったのだと。
神話の舞台が終わり人の時代が始まってからはジルがメティアに祈ることはヴァリスゼアの人々と共になくなったのでしょう。
人でいたいと語ったジルは人に戻りそうして新たにまた生きていく意味をクライヴに最終盤で話した想いと同じ―彼とまた新たな世界で踏み出して最後まで生き抜いていったのだと。