分かる

クライヴからジルへと、ジョシュアへの想い。ジョシュアからクライヴへの想い。
ガブも少し。


分かるとは、言わない。

その言葉をきっかけに顔を上げて考えた相手は。ガブだった。
あの日―守ると誓ったばかりの弟が目の前で手に掛けられ、同時に祖国も失い。俺は弟に生かされたとシドに告げてから。復讐の相手として火のドミナントを探しているとそれまで生き延びてきた動機を話すとシドは否定せず。
俺も家族を殺されたからな、お前の気持ちは分かるぜとガブがもう仲間なんだからとその気持ちを話して良いと快く隠れ家に来たばかりの俺を受け入れてくれて。
シドとカンタンや彼の右腕、表向きはベアラーたちを従わせているポーズを取っていたロストウィングの村の人たちがベアラーは目を合わせたり話したりすることは禁じられている、お前が言いづらいのもそうした扱いをずっと受けて来たからだろうなとそっと汲み取ってくれた。

復讐者としての道は次々と押し寄せる現実と逃げていただけだったと思い知らされた真実を目の当たりにして脆くも崩れ去り。
真実を教えてくれたシドとそんな俺が生きている意味はあるのだと真っ直ぐに見つめて告げてくれたジル。そして最初から家族の様に迎えてくれたグツとガブを含めてあの時共に過ごせた拠点の彼らからの帰りを待っていて迎え入れてくれる場所があるのだとまた知れた温かさ。それはまたしても失われて立て直せた後も痛みを抱えながら。それでも俺たちは生きていくと自ら決めた意思と共にシドとの誓いとジョシュアが生きていて必ず会いに行くという決意を秘め今正に歩んでいる。

「クライヴと同じ二代目だ」
死にそうにもないばあさんが金目当てに忍び込んだ兵士にあっさり殺されちまってな。仇を取ろうとしていた俺を止めたのがシドって訳さ。
フーゴとの因縁の戦いを終え。
エンタープライズを完成させる為にまずはミスリル装甲を完成させるよ!とミドが意気込みを見せるものだからその為の材料として星の砂を探しに。
ほとんど拠点にいないじゃないかとガブがシドから引き継いだベアラー保護活動と、マザークリスタル破壊において各地を動き回る俺に対してそう言ってくれて。
潜伏を余儀なくされヴァリスゼアの情勢をジルと共に見て回っていた頃とは異なり―家族と呼べる彼らがそこで住んでいて。帰る場所を手に入れられたからこその言葉なのだろう。
ガブが分かるぜとあの日俺に発したその言葉は家族として兄弟して。俺とジルが拠点の仲間である迎え入れてくれた想いからだったに他ならない。
星の砂はダリミル付近の南ヴェルクロイ砂漠を遠くに出ずとも近くの小屋-レトニ渓谷へ繋がる川付近にて手に入る。ダリミルに住む老婆曰くこの川は昔からクリスタルの資源を川渡しの舟で運んでいたのだと。
別の買い出しはオットーへ頼みガブと共に来たついでに新たな協力者となったルボルへガブを紹介していた最中だった。
その話は俺も初めて聞かされたから、驚いた。ガブを一目見てシドとのことで感じたものがあったのだろう。
「俺もザンブレクの奴らに家族を殺された…その後は初代シドに見込まれてここにいるんだ」
それまでは盗賊まがいなことやりまくって何とか生き延びてきた。
俺は這うように生き延びたんだ、クリスタルがなくても生きて行けるってこの身ひとつで証明出来るぜ。
「今の所はどうだ…?」
「ドレイクファングが破壊されて大きな混乱と騒ぎになっているのはランデルの方だ。フーゴも消えたからな。お前がダジボーグ城から戻って来たばかりの頃に伝えた通りダリミルはまだそこまでじゃない」
温泉もあるし、フーゴの兵士達の横暴を腹に据えかねていたのもいるからな。ま、娼館の女性たちは良い稼ぎ相手がいなくなってちょっと困るかもだが。その内しつこく言い寄る男たちがいなくなってせいせいしたと言うだろうさ。
ああ、そうだ。酒場で一杯やっていくか?
あー…、クライヴどうだ?
…ウェイトレスの彼女が俺に良い顔をしない。ギルなら出すからふたりで行って来い。
おお、やりい。すぐ戻るわ。

インビンシブルとは違う砂漠のエールの味もそうだが。
家族を戦と兵によって奪われたふたり。通じるものがあるのだろう。愛する者を失った悲しみと痛み、そして奪った相手への怒りと憎しみ。あの日の俺と同じように。
だが。
(分かるとは言えない)
ふたりはシドと出会って俺よりもっと早くこの世界の現実へ目を向けて戦っていたのだから。シドも分かるとは言わなかったのだろう。ただ、諭して引き入れたというだけ。
俺に確かにあったものを見つけてくれたように。


残るマザークリスタル、ドレイクテイルの破壊の為に動き出す時が来た。
先に関所があるボクラド市場へ向かっているグツと合流する為にインビンシブルからオボルスに渡し舟出してもらい。
コストニツェ難民街でベアラーたちに責められ戻って来た時とはまた異なる決意を固め黒の一帯の崖にてジルの足元を気遣いながら手を差し伸べる。
ジルはすっと俺の手を取ってくれた。フェニックスゲートの時と、鉄王国のマザークリスタルを破壊し急いで脱出をした時と同じ様に。
リクイドフレイムとの戦いにおいて迫りくる炎と溶岩から俺を守ろうとシヴァを降ろしたが故に血を吐くほどまでに負荷が掛かったジルを叔父が出してくれた商船の中でしっかりと抱きしめ樽の中から汲んだ水で口をゆすぎ痛みを和らげる薬を含んだ彼女は俺の腕の中で差し伸べた右手を左手で取った。指を互いに絡ませる。
(亡くなった彼女たちが戻ってくる訳じゃない、多くの人の命を奪ったの。
その元凶だったあの男との因縁を私自ら)
苦しく辛いだろうに涙ぐみながらも真っ直ぐなそのまなざしで。
(これからは胸を張って)
あなたと。
ぎゅっと握る力を込める。動けなかった日々を幾度も年をまたぎ重ねていたのは俺も同じだ。
心が動かなかった、人として生きてはいなかったあの日々。
(分かる、とは君には伝えない)
彼女達の命が目の前で奪われた君の無力感は、絶望は。共に怒りや憤りを感じられても代わることは決して出来ないのだ。
そこから抗う為に必死だったその想いを、そして変わらず俺を支えてくれる君の想いを。
(俺は受け入れる)
君の戦いを支え、見届けると告げた後は。共にこれから抗う為の道筋を。
最後まで人として—…。
ジルがクライヴの胸元に顔を埋めた。
あなたと、一緒に居たい。


兄を守るために理を封じこめ石化が広がっていた弟のその様子に悲痛な想いのまま彼は伝えた。
「何で、そこまで—…」
(…ああ)
分かってはいた、あなたはこういう人なのだと。
だから僕はあなたを守ると決めたんだ。
探して探して、必ず見つけ出すと想う以上に。
(ずっと会いたかった)
こんな形でしか—…ごめん、兄さん。
「ジョシュア」
クライヴが立ち上がる。
「うん、兄さん」
「お前の知っていることをもっと教えてくれ」
(真実を知りたいんだ)
あなたが生きていると知ったあの日の僕と同じだ。
これは分かっている、とは違う。僕が産まれた時から確かにあって、今正にここに目の前で。
確かにある。あなたという存在から伝わる。世界でたったひとり、弟なのだと。
僕を人として見てくれる、盾でありナイトでもある男。
お互いに使命を背負いそうして守っていこうと誓い合った兄。

あらゆるものを背負って前に進んで行く存在。
ドミナントたちの力だけではない、人の罪をさえ。
それを分かる、と彼らは語らない。担ってやるにはあまりにも重すぎるから。

彼女は先に人に戻りこれからも支え続けると誓った。全てが分かった訳ではない。どうして、と崩れていく感傷があった。我慢もした。それでもあなたが私をひとりの人として愛しているからこそ必ず見つけると。
人として共に生きていくと誓ってくれた彼の愛を受け入れて。

弟は兄へ怒った。ひとりで何もかも背負って—それはドミナントだと、人でありたいと己が語った故にだが―戦おうとしていたから。
そういう人なのだと分かってはいたが、納得はしない。だから分かるとは決して言わない。
(あなたが背負っていくもの)

One of Us.

(あなたの中で僕ら一人一人が息づいている)

分かる、とはあなたは言わない。
あなたを為す全てとして、あなたの生そのものとなったのだから。

クライヴ。
人へと還っていったあなたの。


※祖堅さんのFF16BGMがPSmusicAwardに再びノミネート・受賞された記念でもあります。