ロズフィールド兄弟が多め。ジルちゃんも。ふたりの姓であるロズフィールド、スペルは異なりますがルーズベルトのオランダ語読みでもあります。

授ける
(ロズ兄弟)

疑いの矛先はすぐに兄に向かった。あの場にいたのは殺された父上、炎に巻き込まれたマードック将軍、中には助けを呼んだにも関わらずザンブレク皇国兵に手を掛けられた者を含め亡くなったロザリアの兵士たち。行方不明になったウェイドとトルガル、アンブロシアを除いたら僕たちを裏切った母様に連れていかれた兄のみだったのだから、当然だ。

ザンブレクの暗殺部隊にフェニックスの力を用いる雑兵がいる―。
瞬く間に教団の彼らは処分をどうするのか話し合っていた。

そのことを告げられあの日をすぐに思い出した。兄さんにフェニックスの祝福を送った―正式に兄がナイトへとなった日を。

手を取る時はなるべく右手を取った。剣を握る手がそちらだからだ。
腕を握る時も僕の右手で兄の右手を取って。真正面から向き合うよう姿勢を向ける。

兄さんの決意と僕からの信頼。それがいつもそこにあった。


「…すぐに会えないと分かっていても変わらなかったよ」
夜遅く、マーサの宿にてジルは2階の寝室でトルガルとアンブロシアは外の馬(チョコボ)小屋に先に眠りについてもらってから兄弟ふたりでマーサが特別に出してくれた酒を少しずつ口に含めながら語り合っていた。
「…ひとりでずっと抗ってくれていたのか」
「ひとりじゃなかった。あなたの意思でフェニックスに手を掛けた訳じゃない。それに兄さんは僕の仇を取ろうとそれまでずっと、ずっと耐えてくれていた…そう考えて動いていたから」
「買い被り過ぎだ…俺はお前もジルにももう会えないんだ、ひとりなんだと…残ったものに縋っていただけだ」
「そうかな。率先して誰かを守ろうとしていたの、変わっていないと僕はあなたを目にしてすぐに分かったよ。トルガルはずっと兄さんを探していて。シドはそれが失われていないと気づいていたから兄さんに託した。
僕も同じだよ。一緒にはまだいられなくても。あの日と同じ…今度はフェニックスの羽根を授けることにしたんだ」
懐からフェニックスの羽根を取り出す。
神々しいまでの炎を宿す度にジョシュアの声が聞こえていた。

クライヴ、と。

それは遠い遠い過去から繋がっている炎の民の血筋であり。ロズフィールド家の長男であり。
5つ下の弟、ジョシュア・ロズフィールドの兄でもあり、ナイトでもある。
そして—。
目の前に存在している同じ血を分けた男がもっとも信頼を寄せる存在であり誓いそのもの。

彼は他の召喚獣の力をフェニックス除いてすべて吸収していた。
それでいて彼自身が授けられたのだと考えているのはフェニックスの祝福のみである。

自身が器である運命から抗い逸脱するのと同じ様に弟ももしかしたらー。
選ばされた器だとしても授け、信頼を示したのは彼自身の意思なのだと。
最後の戦いにおいて証明する決意を固めているのだろう。

―クライヴ、騎士としての道を歩む気はあるかー?
公子として位は下がるとしても父が授けてくれた別の道。
弟が授けてくれた守る為の力。不死鳥の盾。


「休むか。明日も早いぞ」
「子どもの頃は夜遅くまで宝探しをしていたね」
「…宝探しとは違うがネクタールから詳細不明のモブハントの依頼があったな。探し当てに一緒に行くか」
「誰に向かって言っているんだい、兄さん」
「怖気づいたりはしない、と。昔から負けず嫌いだったな」
「あなたの弟だからね」


※分け与えられるのがフェニックスのみだということから。
ジョシュアからのその都度その都度の信頼を注がれる意味と、最後の最後で相手側の思惑では奪うだけだったクライヴが弟から授けられた力で分け与える意味について。


普通(ジョシュア)

ジョシュアが目覚めて正式に拠点のメンバーとなってからー。
相手の狙いがクライヴだと気づきこれからのことを話し合った3人。ヨ―テが待つタボールへ向かう準備に取り掛かることにした。
まずは拠点の皆と挨拶を交わしハルポクラテス、図書館へと弟を案内するクライヴ。
入口付近の本棚にあるとある表題に気づくジョシュア。
ジョシュア「これはフェニックスの…」
クライヴ「ああ、お前が生きていると知って…各地を回りながらヴァリスゼアの現実をジルとこの目にしてきた。そうした中で見つけたんだ」
ジル「あなたに必ず会いに行く。そうふたりで決めたの」
ふたりに穏やかに視線を向けてからおとぎ話が書かれているその本を手にして小さめなテーブルと椅子に腰かけて開いてみる。
クライヴも隣に腰掛けてジョシュアのその様子を眺める。
ジルがそのやりとりを嬉しそうに見守っていたー。

部屋の外から治療に関してある植物の本を取ろうとしていたロドリグの姿もそこにあった。
ロドリグ(タルヤさんも広がりつつある石化のことで心配していたけれど鍛えていたのかな。彼が結構動き回れそうで良かった。
それにしても再会出来て間もないのに今までずっと一緒に居たような雰囲気だな…)
それが彼ら3人にとって普通のことだったのだろう。
ロドリグ(まだ何かを成した訳ではないけれど)

―良かったですね、クライヴ。

ジョシュアは考えていた。フェニックスに関する書物はこうしてロザリアの歴史と共に歩んできたものも含めて多く残されている。
しかし、今隣にいてくれる兄がその身に降ろすイフリートに関してはヴァリスゼア各地を自身も回って来たのだが何も残っていない。分かっているのは兄が狙われている理由もまたイフリートなのだと。
他のドミナントの力を吸収して今その力は俺にあると兄はそう語った。ディオンの過去もそれによって視たのだと。
あくまで吸収であり降ろせる訳ではない。力を失ったとしても宿主そのものの体に変化が起きている影響で顕現は自らに宿るエーテルによって己の意思で引き起こし黒の一帯の中であったとしても可能なのだ。
ラムウを宿していた男と共に過ごしたかつての拠点はタイタンを宿す男によってそうして失われたとクライヴとジルが教えてくれた。ドミナントに関しては初めて顕現したあの時も僕だけが火の召喚獣なのだとそう覚悟を決めていた。
(そうすれば、兄さんのとの約束を守れると思っていたから)
あの日の目覚め以来―兄本人の意識もなかったのだ…激昂したまま顕現をしたルサージュ卿と同じく―何も知らないまま生きて来たとそう話してくれた。
ドミナントに関しては突如シヴァとして覚醒したジルも同じなのだろう。より詳しいのは自分だ。
それは普通の人ではない。
人としての生き方から離れるとしても…教団の宗主になると受け入れそして真実を探す為に動くと決めた。
モースの書物を常に手にして。おとぎ話では神々しいまでに周囲を照らし出しそして再生の炎をその身に纏う召喚獣として描かれていた。
普通の少年として生きていける訳ではないのだと生まれ落ちたときからもう、ずっと、そう父や母、貴族たちや兵士の皆の接し方…民からも感じていた。皆フェニックスの力だけをあてにしていて。僕は…―。
“兄さんにとって僕は何-…?”
口には出せなかったが小さい頃から時折。そうした疑問を心に浮かばせて。心の中で尋ねていた。
兄弟で並んで座りながら王侯貴族のみに与えられる課題を共にこなしながら。隣にいる兄がこう答えてくれているような感覚に包まれていたー。
“弟だ”
今も隣で見守ってくれている兄からはその気配を感じている。もっとつい最近だって。そう感じられたのは自治領でしっかりと抱きしめられたあの時。
“生きてくれていた、やっと会えた。”
…僕も同じだったから。
これからタボールに向かう。3人でトルガルを連れて旅したいなと小さい頃に思っていたことが実現するのだ。
真面目な兄のことだから遊びに行く訳ではないとそう答えるだろうけれど。そしてジルが傍で小さい時からそうしてくれていたみたいに微笑んでくれるのだ。
それが僕らにとって普通だったのだから。


拠点にジョシュアが合流するようになって数十日後―。
クライヴ「相変わらずニンジンは苦手か、ダリミルでも残していたな」
ジョシュア「他の野菜で上手く栄養とっているよ」
ジル「小さい時はクライヴのお皿にそっと皆に気づかれないようにのっけていたわね」
クライヴ「…さすがに今はもうしないよな?」
ジョシュア「さすがにね。ヨーテに頼んで最初からよけてもらうようにしているよ」
クライヴ「普通は克服しようとするものだろう」
ジョシュア「その代わり兄さんが無茶ばかりしないように僕も役割分担させてもらっている。兄さんだって普通ならもっと他の人を頼るべきだよ」
クライヴ「それは俺たちでないと出来ない任務も」
ジョシュア「そうやってすぐ何でも背負おうとする、ほんとに変わっていないね。
僕はともかくジルや皆に心配ばかりかけていたでしょう」


オットー「きちんとあいつに口を出してくれるのが増えて助かったが…あいつら昔からああだったのか」
ジル「屋敷に居る時は大人しかったわ。今の方がふたりともぶつかり合っていると思う。でもそれが普通なのよね」


それはごく自然なこと

遊びに来た訳じゃないんだ、行くぞ。
兄のその声を皮切りに弟も彼女も歩み出した。後ろから静かにトルガルがついて来る。まずはジョシュアの従者であるヨ―テと合流するのだ。
見るものが全て真新しい、そうした感覚に包まれることはなかった。一緒に旅が出来たら良いなあと少年時代に願っていたことがそのままあの時に出来ていたのならそう思えたであろうが。
これは誓いと目的を果たす為の抗っていく歩みなのだ。
旅は道筋に例えられるものである。クライヴとジョシュアのロズフィールド兄弟そしてふたりの幼なじみであるジル・ワーリックにとっては険しい道筋をこれまで辿ってきたし、これからも険しい崖である狭い道を歩み狭い門を歯を食いしばりながら通り抜けていかなければならないと彼らは分かっているのだ。
そうした険しい道のりの中で-…。
「兄さん、この剣は父さんの…?」
「ああ、マードック夫人が大事に預かってくれていて…全て受け取った。イーストプールの惨劇のことはお前も聞いていただろう…」
「その時からシドに協力するって、ふたりで彼の前で誓って決めたの」
「もう、5年も前のことだ。拠点を立て直すだけでも…それだけ掛かった」
その間もずっと、生きているのだとはっきりした自分のことを想っていてくれたのだろうと、ジョシュアの中で積年の兄への想いがこみ上げる。
「兄さんだからみんな立ち上がれたし、ついて来たんだよ。離れたくないってみんなそう思って。あの日の僕みたいに…ね、ジル」
ジルは惨劇当時にフェニックスゲートに居た訳ではないが、彼女の兄へ向ける想いも自分とは異なる感情も混じっているとはいえ、同意を求めるのには十分だろう。
「ええ、そうね。そしてあなただからこそ。ずっとずっと会いたかったの、ジョシュア」
同意するだけではない。
誰かを、大切な人を守るという発端ともなり現在も今正に目にしているクライヴの弟への想いを彼女自身の言葉で含めながらジルが穏やかに微笑んだ。
私は人らしく居られているかしら、クライヴ。とノースリーチにてふたりで緩やかに流れる川を眺めていたときの穏やかな彼女そのもので。
変わらないな、と再会したばかりの意思の強い彼女に惨劇が起きた後は放棄されていたフェニックスゲートかれ自分を受け入れた後にそう話したことがあった。今はふたりには変わっていないのだと告げることを控えている。ふたりが心の底から願っている人でありたいというその想い―誓いを果たすまでは。
「嬉しかったの、本当に…。私が嬉しくて涙するときってあなたたちのことばかりだったわね…」
「はじめて泣かれた時それが分からなくて。どうしようって困ったよね、兄さん」
「ああ…」
メティアに祈って涙したジルのことを思い出す。彼女はいつも自分たち兄弟のことばかりで。
「それが、私…」
だってとかでもとも言わない。ごく自然に紡がれた彼女の言の葉。
3人で空の文明時代の遺跡へと遊びに出た時と同じ穏やかなひととき。あの頃はこのままトルガルも連れてアンブロシアに乗って何処かへ行こうかと何気なく思っていた。
第一王子でもナイトでもない、ごく普通の少年として。
フェニックスのドミナントであり第二王子として家を受け継ぐのでもない、兄とジルと好きなように旅をするのだと病弱な自分を振り払って。
ふたりと一緒に居られたらそれだけでいいの、とごく普通の女の子として。
…思い浮かんだことはすぐに引っ込めて声に出すことは3人とも一度もなかったが。
…―それでも。

「正直君に泣かれるのはすまないと思う…いや、感謝している、だな」
「僕が離れている間は兄さんを支えてくれていた。僕の方からもありがとう、ジル」
(変わらない…本当にあなたたちふたりは…)
兄弟がお互いへの想いをずっとずっと大事に抱えてきたのを見てきたし、今も実感しながら見ている。だからこそごく自然に言葉にするし時にはこみ上げてくる想いそのままに涙するのだ。
これから先も、きっと涙することはある。
それはニサにてこぼれ落ちたシヴァのドミナントとしての涙ではない。
ジル・ワーリックというひとりの人としての愛そのもの。


触れあうということ

ジルがすっとジョシュアの方に寄ってきた。
「どうかしたの、ジル?」
「すごい身長伸びたのね、とそう思ったの」
「鍛えた成果も…あるかな?」
誰と比べてとか、小さい時は私より小さかったのにねとは言わないのが彼女らしい。
(剣の腕も相当手練れていたな)
望んでレイピアを振るって来た訳ではない彼女がいるので彼もまた声にはしないが、その視線が意味することに気づいた弟は静かに兄に対して微笑んだ。
「俺が先に行って様子を見て来る。ふたりは少し待っていてくれ」
そう遠くない場所へクライヴが向かう。
ふたりで剣の稽古をしていた彼を見守っていた頃を思い出した。離れ離れになる前もいつもそうだった。率先して弟と彼女を守ろうとしてくれていたのだ。
再会して3人で行動するようになって間もないが、こうした関係は変わらない。
少し変わったことといえば―。
ジルは自治領内でジョシュアが倒れた時にしっかりと彼を抱きしめてクライヴのあの背を見送っていたがそれ以降は不用意に触れたりはしない。
お互い微笑み合うことはあっても。
「…何を話そうかとは悩まなかった。あいつの好きにはさせない、失うわけにはいかないって気づいてもらえたから」
「そうね。私は剣を交えた時に気づけなかった。再び目を覚ましてクライヴの姿を目にした時…私、嬉しくてクライヴの名を口にしたわ。抱きしめてもらって安心した。会いたかった、帰って来たのだと…そう思ったの」
「帰って来たか…うん、僕も同じかな。沢山謝らなきゃいけないって思っていたのに…すごくほっとしたんだ」
自分たちが生まれる前からいてくれた人。
インビンシブルという拠点において、彼自身が皆の帰るべき場所なのだ。
力強く抱きしめられて…実際に触れあってそのことを確信した。

「兄さんは気づいているのかな」
「気づいてはいるのよ。ただ、すぐに背負い込んでしまうから…」
「君に気を遣わせているのは変わらず、か。僕の方からうまく言っておくから、ジルは違うやり方で兄さんを頼むよ」
「ジョシュア…」
兄に応えた静かな微笑みではなく、意味ありげなその笑みに勘づく。しっかりと頷いた。
相手は兄さんだもの。怖がることなんてないし、ね。
シヴァのドミナントとして目覚めたあの日以降―人に触れられるのも触れるのも―もうぬくもりなど感じないのだとそう思っていた。
力強く抱きしめられ彼のあたたかい想いを感じて。固く握りしめあった掌からお互いの決意を確かめ合ったあの時から、また変わった。
人として、一緒に居たいのだと。どうしたらこの想い全てを彼に届けられるのだろう。
この現実と抗うのとはまた異なる、彼が目指す人らしく生き抜くのだという願いと共に日に日に増す強い想い。
マザークリスタルの加護が断たれた後でも失われることはないのだ、人らしく命の終わり―死を迎えたとしてもこの想いは受け継がれていく。
人と人が触れ合い、命が生まれる度に。
強い確信を抱きながら戻ってきたクライヴにふたりで歩み寄っていった。


兄弟小話。色んな人へ目を向けているのはふたりとも上に立つ人物故か。

・ささやかな(セリフのみ)

拠点内
ジョシュア「兄さん、あの学者の女性の方…」
クライヴ「ヴィヴィアンか?何かあったのか」
ジョシュア「どういう人なのかなって思って」
クライヴ「彼女は自治領出身なんだ。カンベルでミドと知り合ったと聞いている。提案した内容が学会の奴らには都合が悪く…理由はお前も分かるな。立場が危うくなってミドを経由して俺たちがここに招いたんだ。ウォールード王国は殆ど手がかりがないから助かっている」
ジョシュア「今度、語りあってみようかな。色々聞けるしね」
クライヴ「そうしてくれ。俺からもいいか。ヨーテのことなのだが…」
ジョシュア「ヨーテがどうしたの」
クライヴ「いや、彼女と話をしてもお前のことばかりで。何が必要かどうしたいのかはっきりと口にしない。流通については叔父さんが協力してくれるから、必要なものがあれば俺が出たついでに取りに行こうと考えていたのだが…」
ジョシュア「ヨーテはそうしたところがあるんだ。そうだね、僕や兄さんが相手だと気を遣っている。ジルに頼んでみようか」
クライヴ「俺たちでやりづらい時にはジルに頼りっぱなしだな…」
ジョシュア「女性同士相談もしやすいかなと思ったんだけど、確かにそうだね」
クライヴ「いや、お前の提案が悪い訳じゃない。むしろその方がよさそうだ」
ジョシュア「うん、分かっているよ。そして兄さんが言いたいこともね。ジルに何かお礼もしないと。それは兄さんに任すよ」
クライヴ「分かった。ちゃんとお前の分も乗せる」
ジョシュア(昔からこういう所が素直だなあ…。マードック将軍に怒られた後でふたりの様子を見に行ってみたら…僕が頑張らなくても大丈夫だと思ったからね)
クライヴ「どうかしたのか?」
ジョシュア「何でも。またすぐ拠点を出るよね。僕の方からジルに言っておく。後でストラスを飛ばすよ」
クライヴ「ああ、頼む」
ジョシュア(ささやかながら分かりやすいよね、兄さんは)
クライヴ(振り向いて)「そうだ、お前は何か欲しいものあるのか」
ジョシュア「…そういうとこだよ、兄さん」

※いざという時は自分を優先する兄にやきもき半分・うれしさ半分な弟だといいな。


・語るもの語られるもの

それは何の本ですかとゼメキス時代の神話の戦いを楽しんで読んでいた時にジョシュアに聞かれたことがある。
身体の弱い弟に、この強さと戦いに憧れとは異なるが興奮していたなどと伝えたら悪いなと思った。
ヴァリスゼアにたくさんある神話のひとつを教養として読んでいたんだ、と答えて。間髪入れずにお前が何の本を読んだか教えてくれるか―そう切り返すことにした。
そうした俺の気遣いの背後にあるものを弟は見抜いていたのだろう。
「ドラゴン…神話の書物の中でも多く登場する、正に頂点ともいえる存在だ。ネクタールがまとめてきた依頼の最後の相手、か…」
各マザークリスタルの名称ともして取られているドラゴン族。クリスタル自治領で戦った竜騎士団が守護者として崇める白き竜も守護者に相応しい手強い相手だったのだ。
自由に空に舞い上がり、炎を吐き、そのカギ爪は一撃でも大地を抉る。
一瞬の隙が命取りとなる。
「僕とジルも行くよ、兄さん」
ネクタールとのやり取りを遠目に見ていたのであろう、ジョシュアが部屋で考え事をしていたクライヴに近づいて来た。
ジョシュアの瞳をふと眺めた。剣の腕が上がったな、強くなったな。そうしたことを伝えるのは相応しくはない。
お互いにドミナントであり、未だ運命の支配下にある存在なのだ。クライヴは特に。
持っている力は人ならざるものであり、人ではいられないもの。借り物と仮初でしかない。
「分かった、頼む」
好き好んで命を懸けた戦いに挑んでいる訳ではない。理を破壊したらヴァリスゼアはもはや神話の舞台ではなくなる。アカシア含め不安の種を魔法が使えるなら使えるうちに摘んで置いた方が良い。
俺たちは役者ではない、人として生きるのだ。これからも辛く悲しく続く現実の中で罪を背負ったまま、最後まで足掻いて生き抜く。
だからこそ、今お前が向けている想いも受け止めよう。そして、傍にいてくれて頼ることが出来るのだという自ら湧き上がったこの想いもまた事実なのだからこの現実との戦いに赴こう。
戦力として現実的に考えるなら俺にとってお前は必要であり、そしてお前が俺を想って足掻き続けてくれたのもまた現実―事実であり、真実だからだ。
「ジョシュア、この依頼から戻ったら子どもたちにロザリアのおとぎ話を話してやってくれるか」
「良いよ。僕らの活躍よりその方がずっと良い。後は…ロザリアの始まりのことも話そうかな」
「構わないが…何故また?」
「ひとりの男が立ち上がった、そこから人々が集まった…今正に兄さんがやっていることだからね」
穏やかに語る弟の本心がはっきりと表情にも表れていた。
「よせ、俺はそんなんじゃない」
「いいや、そうだよ。もう決めたから」
こうなると押し問答するより、どちらかが先に受け入れて受け止める方が重要となる。
子どもの時は半々だった。今はクライヴが先に受け入れることが多くなった。
「…お前がそうしたいなら、任せる」
「ありがとう、兄さん。子どもたちは喜ぶよ。ロザリアのこの精神はウォールードで生き残ったあの子だって、受け継いでくれる。兄さんがいてくれているからね」
ジルに声を掛けて来るねとすっと弟が立ち去ってから。
「…お前がそうだから、俺もそうなれるんだ」
生きてくれていたこと、再会出来たときと同じ喜びを感じながらクライヴは部屋に飾ってある父であるエルウィン大公がふたりに託した兜を見つめた。
※頑固さではジョシュアの方が上。最後まで貫く意思の強さはクライヴが上回る。
初回プレイではジョシュアとジルを連れて行くサイドクエストを最後にしたので、こうした印象も自分の中にはあるのだと思います。

・毛繕い(トルガル&アンブロシア)

厨舎のおじさん「クライヴ様の馬(チョコボ)ならとても元気ですよ、そして気高い。早くクライヴ様と狩りに出たくて仕方ない様子です」
クライヴ「アンブロシア、今日も綺麗にしてもらったのか。毛つやも良い、良かった。明日は狩りに行こう」
アンブロシア(じっと見つめている)
クライヴ「待ちきれないのか?俺が明日の為に今日の稽古を済ませておく。それまで待っていて欲しい」
アンブロシア「キュイ…」
ジル「あ、だめよ、トルガル。逃げようとしたわね」
クライヴ「どうしたんだ」
ジル「庭師がいたのに庭園で跳ねまわっていたのよ。おかげでお腹が泥だらけ。水浴びさせようとしたら逃げるの」
クライヴ「葉っぱも絡んでいるな…使い古した櫛があるなら、ジルすまないがそれを使って毛繕いしてもらえるか」
ジル「分かったわ」
クライヴ「新しいのは城下町で買いに行こう。君が気に入ったものなら俺が払うよ」
ジル「ありがとう、クライヴ。ジョシュアもいっしょに行けると良いわね…」
クライヴ「上手く予定を合わせるさ。俺やジョシュアが言い聞かせてもトルガルはなかなか水浴びしたがらない。だから助かるよ」
壮年期―。
クライヴ「再会して5年が経ったが…察したのかトルガル、どこかに隠れたな」
ジョシュア「アンブロシアは変わらず毛繕いを受け入れているね」
クライヴ「ロザリスに来てすぐの頃に無理やり洗われたことが嫌だったのかもしれない…が、子どもたちも年配者も拠点には居る。毎日箒で掃いてくれているが清潔にしておくに越したことはないからな」
ジョシュア「抑えつけても可哀想だけど…大事なことだからね」
クライヴ「ジルに頼んでどうにかしてもらうには戦闘力が高い。俺とガブとジョシュアでやるしかない」
ジョシュア「どこかの隙間に挟まっているのかも知れない。カローンの倉庫も協力してもらって開けてもらうよ」
クライヴ「そうしてくれ、ついでに並の櫛ではもう歯が立たない。ブラックソーンに作ってもらった鉄混りのでいくぞ」
ガブ「真剣なところ悪いんだが…何か間が抜けているやり取りになってねえか?」
クライヴ「下手をすれば一日掛かりだ。ガブにも覚悟を決めてもらおう」
ガブ「お、おう…」
※ふたりともいいとこの息子ではあるので偶に天然になって欲しい(笑)

・どっちが好き

階段下のミドの大工房にて―。
ミド「あー、実験と開発していると長い髪が邪魔だなって思う事あるんだよね。
いっそのこと切っちゃおうかなあ…」
クライヴ「ミドには似合っていると思うが」
ミド「まあ、自分でも気に入ってはいるんだけどね~。実用性も大事だと思うんだよね」
クライヴ「シドにそう言われていたのか」
ミド「ううん、父さんは何も。だからってほったらかしにしていたら怒られたけど。自分はだらしないところあったのにね」
クライヴ「ミドのことも含めて沢山の事を考えていたんだろう」
ミド「…そうだね。そうだ、クライヴは短いのと長いの、どっちが好き?」
クライヴ「…長い方、だな」
ミド「何か違うひと思い浮かべたね。ま、クライヴの好みがあのふたりから白銀の髪なんだっていうのは知ってるけどさ」
クライヴ(ふたり?)
ミド「ジルとアンブロシア」
クライヴ「ああ、確かに光に当たると綺麗だしな。ミドの金髪はこの黒の一帯の湖の中でも十分に映える。それぞれの良さがあるさ」
ミド「じゃ、ジョシュアは青空の下で映える金髪ってことで。だから…頼んだよ、クライヴ」
クライヴ「…ああ」
ミドの大工房の階段上から聞こえていたジョシュアとジル-。
ジョシュア「盗み聞きとかするつもりではなかったのだけど…」
ジル「大切に想われていることが、幸せだって…クライヴの傍にいる度に感じている」
ジョシュア「うん、そうだね…」

・どこが好き

ガブ「なあ、ジョシュアはクライヴとジルのどこが好きなんだ?」
ジョシュア「真面目で責任感が強いところです。そして僕を大切に想ってくれていることも」
ガブ(流石あいつの弟だけあって真面目に答えて来たな…)「ふたりまとめてか。それぞれで好きなところとかあるのか?」
ジョシュア「兄さんは…人を惹きつけていく、上に立つのに相応しい人だとずっと思っていて。ジルは穏やかで…本当は僕にも兄さんにも伝えたいこと沢山あるだろうに黙って気遣ってくれている。申し訳ない気持ちもあり、そして嬉しくも思っています」
ガブ「そうか。俺はてっきりお前もジルのことを…いや、何でもない。変なことを訊きそうになった、忘れてくれ」
ジョシュア「他の方にも訊かれましたよ。子どもの頃はお姉さんみたいな感じだったのかと。ちょっと違うかな」
ガブ(途中から諦めるようになったのか…?)「ち、違うっていうのは」
ジョシュア「兄さんのことをいつも語れる相手だった。守られていることも支えようとしてくれたことも、兄としてひとりの人として接してくれているのだとそう語り合える心許せるきょうだいです。ジルが年上だからとか僕が年下なのだからとか関係なかった。僕は8歳まではほとんど屋敷を出られなかったから、ジルが来てくれてクライヴ兄さんの話をするのが楽しみで仕方なかったんだ」
ガブ「貴族は貴族の居心地の悪さあったんだろうな、てのはまあ経験してきたわけじゃねえけどお前らと過ごすようになってから考えるようになった。お前たちと話すの、俺も楽しいぜ」
ジョシュア「ガブのそうした性格はすごく良いと思います」
ガブ「クライヴなら絡み酒出来るんだがな~。流石にジョシュアとはやめておくわ」
ジョシュア「飲めない訳ではないです」
ガブ「けど、俺がタルヤやお前の従者の子に怒られるんだわ」
ジョシュア「僕はときどきタルヤに怒られてニンジンを口につっこまれそうになりますよ。ああ、兄さんもジルもそうして来ないところも好きかな」
ガブ「お前ら小さい頃にどう過ごしていたのか、何か思い浮かぶわ…」

※ジョシュアにほんの僅かな時間でも拠点の皆と色んな話をしていて欲しいのです。