吐息
クライヴとジル。お互いを見つめるふたり。
かつてシドルファスがせめてベアラーやドミナントたちが人らしく死ねるようにと案内してくれた隠れ家は。多くの者たちの命と夢が奪われ。その張本人であるフーゴとの決着がついたとクライヴが皆に告げると。ずっと皆に謝っていた、でもクライヴが仇を取ってくれたと報告出来るとゴーチェがささやかながら笑ってくれて。これで前に進めるとカローンとブラックソーンが大きく頷いてくれた。ジルが鉄王国にてあの男を自らの手で過去の因縁を断ったのと同じ様に。
あの日の悲劇が大きなわだかまりとして残っていた彼らにとってかつての居場所と中心であり亡くなった男への弔いも含めて報告に行こう—その前に血のつながりはなくても娘であるミドの依頼をすべて終える為、クライヴとジルはノースリーチへの買い出しへと途中通過するロストウィングを2頭の馬(チョコボ)を駆り出して急いでいた。
「ミドの奴、拠点の皆の為でもあるが…上手いことこき使われている感じがするな」
タッタッとアンブロシアともう1頭、そしてトルガルは力強く大地を駆けていく。
エーテルが満ちていて、青空が広がっている緑豊かな森が残されている地方を巡っているとクリスタルを巡る戦いやクリスタルの支配下に置かれた束縛などなく、ただヴァリスゼアの人々が。ようやく前に進めるのだと自ら歩んで、そして笑顔を見せてくれるようになった魔法に頼らずに暮らしている皆のようであって欲しいとそうした願いが自然と浮かび上がる。
「でも、あの子が来てから雰囲気が随分と和らいだでしょう?」
「…確かにな」
彼女とて空元気に振舞っている訳ではない。父親と手紙でやり取りを重ねていた間も。
ここに来る前も、来てからも。シドとの約束とクリスタルに代わる遺産をずっと大事にそして真っすぐにダンジョンと呼ばれるインビンシブル内に与えられた地下室にて考えている。
ろ過装置の設計も彼女がいなければ完成はしなかったし、本を読む楽しみをかつての拠点で知って助手となったカリナの成長を思えばミドもインビンシブルにおいて必要不可欠な存在なのだ。
日が暮れていく。使われなくなってかなり経つ小屋を前から見つけていたので盗賊たちや魔物が付近にいないことを確認すると今日はここで休むことに決めた。
ロザリアにおいてもスリーリーズ湿地にて各所にある人があまり寄らない物置に盗賊たちが巣くう度に追い払っている。故郷が荒れ果てていくのはとても辛い、それにドレイクブレス破壊後民の生活は苦しい。ドレイクヘッド、ドレイクファングを有していた有数の領土が同じく消滅と共に混乱しており、各地の主だった人物たちがその対処に追われている。クリスタルと魔法失くしてこのヴァリスゼアでは生きていけない、と。ロザリアはフーゴの部下たちが皇国である兵達を打倒した故に少しその圧政から解かれつつある。
鉄王国にて熱い溶岩が流れる中、普段なら大人しいファイアリザードを下し。喉もからからだろうとジルに飲み水を差し出した時と変わらずそれで火打ち石を用いて湯を沸かしふたりで半分ずつ分け合いお茶を用意する。通りかかった小さな村で買ってきたパンとモリーが持たせてくれた干した果実を小屋に残されていた木の器で近くの川で丁寧に水洗いした後。ふたり分きちんと皿によそって食事を取った。
トルガルは途中で狩りに出たアンテロープを一頭分骨まで噛みつきながら。アンブロシアともう1頭にギサールの野菜を与え、川から汲んで来た水を飲ませてやる。
長旅をこの5年間続けて来たふたりにとってはこうした一連の流れも慣れたものだった。
未だ慣れない—新しい発見があるものと言えば。
火を起こした暖炉の前でふたり毛布にくるまりながら暖を取る。
ふっとしたクライヴの吐息にジルが耳を寄せる。
私を見つめる、このヴァリスゼアに蔓延る認識を測る、そして受け継ぐ者がいなくなったロザリス城を見送った彼のまなざしとは別の—…。
言葉に紡がずとも伝わってくるあなたを物語るもの、あなたの心の奥底にあるもの。
インビンシブルにてあなたは時折こうした風にそっとため息を吐く。
それは疲れから来るものではなく、あなたがひとりひとりを人として見つめて見出してくれたから皆が人らしく過ごせているのだと—ほっと出来る場所とは人が人らしく生きている世界なのだと感じているから。
ジョシュアとシドとの誓いから抗わなければならないこの世界において背負って行くもの重さを受け入れながら。あなた自身をヴァリスゼアへと差し出している。
“あなたが生きていることに意味はあるのよ”
“ジョシュアが与えてくれた2度目のチャンスだもの”
月に寄り添うメティアをふたりで見つめた時も。
シドとの誓いを受け継いで起こる悲しみと痛みは現実で。それでもマザークリスタル破壊の為に動くと決めた—その中には私のあの国においての因縁もあったからあなたは支えると言ってくれた—時も。
私もあなたとあなたを形作る全てを支えると決めたから。
日々負担が増していく私の体の身体とは別の、とても厳しく辛い現実。
その中でも確かに失うことはなく、あなたを為しているのだと分かるその吐息。
5年の間にこうして寄り添って心が動いていると感じる瞬間は幾度もあった。
それでも受け入れられなかったのは、あの男との因縁があったからだけではない。
少女の頃だった私をあなたが見ていた、から。今はっきりとあの国に行く前に告げてからあなたが共に戦い続ける私そのものを大切に想ってくれているのが分かる。私をひとりの人として、あなたにとっても—…。
ふとした瞬間に出たものを目ざとく俺から目を逸らすこともなく。変わらずに見つめてくれていた日々と同じ様に寄り添って支えてくれる君にとても感謝している。
のうのうと生きていてひとりだった時には出来なかった、考えることすら及ばず囚われていたのに抜け出し前に進めたのはシドと君。そしてジョシュアや皆のお陰だ。
世界が混沌としている中、時折見失いそうになる。
その度に傍にいて支えてくれる君と、皆。俺を生かしてくれたジョシュア。
“それとも、頼りない?”
…そうじゃない。
大切、なんだ。愛おしく想っている。
もう会えないのだと思っていたにも関わらず、再会出来てから受け止めると君が言ってくれたあの日から。ひとりでは無理だとはっきりと分かって。
皆がひとりひとり、手となり足となり。ひとつのチームとして支えてくれているこの日々にとても感謝している。ただ、ふとした瞬間に人として生きて欲しいと心の奥底から願っているのに。
俺自身はどうなのだと—…ガルーダ、ラムウ、そしてタイタン。
イフリートのドミナントだと受け入れてから。何故他の召喚獣を宿していたドミナントたちの力を俺だけが使えるのか。この世界の真実を知りたいと考え、実際にシドの前で君の手を取りながら誓った。
ドミナントと召喚獣。残るマザークリスタルドレイクテイルにて、明らかになるのだろうか。
ふっと出た息にジルがことんと右肩に頭を寄せてくれた。
今はミドの用事を考えましょう。それにふたりで買い物に出るの、久しぶりで何だか嬉しい…。
少女の頃の様に朗らかな君を久しぶりに見た。あの国において氷の意思で因縁をマザークリスタルドレイクブレス破壊と共に断った後は人らしく生きようと決めた君がここにいる。
そして未だシヴァのドミナントであり、俺と共に戦い続ける—。
ゆっくりとまた息を吐き、そっと微笑んで“ああ”と君に応える。
シドから受け継いだものをいつだって支えて—上手くいかない辛い現実が続いた時には—その苦しさもお互いに吐露し合いそれを受け止めながら。
世界が魔法による理(ルール)に敷かれている以上、そこからの変化と逸脱は大きな痛みとそれを望まないヴァリスゼアの大多数の人々から責任が問われる。罪人だと罵られたとしても、人が人として生きていく世界を創り出す為に。
(ガブも行きたがっていたのに、良いの?)
(俺たちドミナントの方が相応しいからな)
—なあクライヴ、ドミナントと人はどう違う?
—私は人でありたいの、クライヴ。
違和感がなかった訳ではない。
だからこそ、私は人らしく過ごせているかしらと思い出話に花を咲かせて。
そして今目の前で買い物を楽しんでいる君へそう出来ているのが人らしく過ごせている証だろうと告げたのだ。
シヴァのドミナントとしての氷の意思ごと溶かそうと君へと踏み込んで。
己の内に灯るフェニックスのナイトとして宿った炎の想いを全て君へと注ぐと決めたのは。君の目の前にいる男は人ではなく運命(さだめ)として生まれて。
そして君に人であって欲しいと心の奥底から、人としてこの運命に打ち勝つと誓いと共に力強く抱き合い言葉だけでは到底届けられない想いをお互いの高まる息遣いと共に絡めあっていく。
波がゆらゆらと寄せる音と、髪を揺らす潮風と。
ヴァリスゼアのどこからでも見られる月は綺麗で。
君は吐息と共にそっとメティアを見つめていた。俺は吐息と共にここに居ると優しく君の頬に触れていく。
互いにあるものを確かに見つめて。そうして補い合い、辿り着けた。
クライヴとジル。お互いを見つめるふたり。
かつてシドルファスがせめてベアラーやドミナントたちが人らしく死ねるようにと案内してくれた隠れ家は。多くの者たちの命と夢が奪われ。その張本人であるフーゴとの決着がついたとクライヴが皆に告げると。ずっと皆に謝っていた、でもクライヴが仇を取ってくれたと報告出来るとゴーチェがささやかながら笑ってくれて。これで前に進めるとカローンとブラックソーンが大きく頷いてくれた。ジルが鉄王国にてあの男を自らの手で過去の因縁を断ったのと同じ様に。
あの日の悲劇が大きなわだかまりとして残っていた彼らにとってかつての居場所と中心であり亡くなった男への弔いも含めて報告に行こう—その前に血のつながりはなくても娘であるミドの依頼をすべて終える為、クライヴとジルはノースリーチへの買い出しへと途中通過するロストウィングを2頭の馬(チョコボ)を駆り出して急いでいた。
「ミドの奴、拠点の皆の為でもあるが…上手いことこき使われている感じがするな」
タッタッとアンブロシアともう1頭、そしてトルガルは力強く大地を駆けていく。
エーテルが満ちていて、青空が広がっている緑豊かな森が残されている地方を巡っているとクリスタルを巡る戦いやクリスタルの支配下に置かれた束縛などなく、ただヴァリスゼアの人々が。ようやく前に進めるのだと自ら歩んで、そして笑顔を見せてくれるようになった魔法に頼らずに暮らしている皆のようであって欲しいとそうした願いが自然と浮かび上がる。
「でも、あの子が来てから雰囲気が随分と和らいだでしょう?」
「…確かにな」
彼女とて空元気に振舞っている訳ではない。父親と手紙でやり取りを重ねていた間も。
ここに来る前も、来てからも。シドとの約束とクリスタルに代わる遺産をずっと大事にそして真っすぐにダンジョンと呼ばれるインビンシブル内に与えられた地下室にて考えている。
ろ過装置の設計も彼女がいなければ完成はしなかったし、本を読む楽しみをかつての拠点で知って助手となったカリナの成長を思えばミドもインビンシブルにおいて必要不可欠な存在なのだ。
日が暮れていく。使われなくなってかなり経つ小屋を前から見つけていたので盗賊たちや魔物が付近にいないことを確認すると今日はここで休むことに決めた。
ロザリアにおいてもスリーリーズ湿地にて各所にある人があまり寄らない物置に盗賊たちが巣くう度に追い払っている。故郷が荒れ果てていくのはとても辛い、それにドレイクブレス破壊後民の生活は苦しい。ドレイクヘッド、ドレイクファングを有していた有数の領土が同じく消滅と共に混乱しており、各地の主だった人物たちがその対処に追われている。クリスタルと魔法失くしてこのヴァリスゼアでは生きていけない、と。ロザリアはフーゴの部下たちが皇国である兵達を打倒した故に少しその圧政から解かれつつある。
鉄王国にて熱い溶岩が流れる中、普段なら大人しいファイアリザードを下し。喉もからからだろうとジルに飲み水を差し出した時と変わらずそれで火打ち石を用いて湯を沸かしふたりで半分ずつ分け合いお茶を用意する。通りかかった小さな村で買ってきたパンとモリーが持たせてくれた干した果実を小屋に残されていた木の器で近くの川で丁寧に水洗いした後。ふたり分きちんと皿によそって食事を取った。
トルガルは途中で狩りに出たアンテロープを一頭分骨まで噛みつきながら。アンブロシアともう1頭にギサールの野菜を与え、川から汲んで来た水を飲ませてやる。
長旅をこの5年間続けて来たふたりにとってはこうした一連の流れも慣れたものだった。
未だ慣れない—新しい発見があるものと言えば。
火を起こした暖炉の前でふたり毛布にくるまりながら暖を取る。
ふっとしたクライヴの吐息にジルが耳を寄せる。
私を見つめる、このヴァリスゼアに蔓延る認識を測る、そして受け継ぐ者がいなくなったロザリス城を見送った彼のまなざしとは別の—…。
言葉に紡がずとも伝わってくるあなたを物語るもの、あなたの心の奥底にあるもの。
インビンシブルにてあなたは時折こうした風にそっとため息を吐く。
それは疲れから来るものではなく、あなたがひとりひとりを人として見つめて見出してくれたから皆が人らしく過ごせているのだと—ほっと出来る場所とは人が人らしく生きている世界なのだと感じているから。
ジョシュアとシドとの誓いから抗わなければならないこの世界において背負って行くもの重さを受け入れながら。あなた自身をヴァリスゼアへと差し出している。
“あなたが生きていることに意味はあるのよ”
“ジョシュアが与えてくれた2度目のチャンスだもの”
月に寄り添うメティアをふたりで見つめた時も。
シドとの誓いを受け継いで起こる悲しみと痛みは現実で。それでもマザークリスタル破壊の為に動くと決めた—その中には私のあの国においての因縁もあったからあなたは支えると言ってくれた—時も。
私もあなたとあなたを形作る全てを支えると決めたから。
日々負担が増していく私の体の身体とは別の、とても厳しく辛い現実。
その中でも確かに失うことはなく、あなたを為しているのだと分かるその吐息。
5年の間にこうして寄り添って心が動いていると感じる瞬間は幾度もあった。
それでも受け入れられなかったのは、あの男との因縁があったからだけではない。
少女の頃だった私をあなたが見ていた、から。今はっきりとあの国に行く前に告げてからあなたが共に戦い続ける私そのものを大切に想ってくれているのが分かる。私をひとりの人として、あなたにとっても—…。
ふとした瞬間に出たものを目ざとく俺から目を逸らすこともなく。変わらずに見つめてくれていた日々と同じ様に寄り添って支えてくれる君にとても感謝している。
のうのうと生きていてひとりだった時には出来なかった、考えることすら及ばず囚われていたのに抜け出し前に進めたのはシドと君。そしてジョシュアや皆のお陰だ。
世界が混沌としている中、時折見失いそうになる。
その度に傍にいて支えてくれる君と、皆。俺を生かしてくれたジョシュア。
“それとも、頼りない?”
…そうじゃない。
大切、なんだ。愛おしく想っている。
もう会えないのだと思っていたにも関わらず、再会出来てから受け止めると君が言ってくれたあの日から。ひとりでは無理だとはっきりと分かって。
皆がひとりひとり、手となり足となり。ひとつのチームとして支えてくれているこの日々にとても感謝している。ただ、ふとした瞬間に人として生きて欲しいと心の奥底から願っているのに。
俺自身はどうなのだと—…ガルーダ、ラムウ、そしてタイタン。
イフリートのドミナントだと受け入れてから。何故他の召喚獣を宿していたドミナントたちの力を俺だけが使えるのか。この世界の真実を知りたいと考え、実際にシドの前で君の手を取りながら誓った。
ドミナントと召喚獣。残るマザークリスタルドレイクテイルにて、明らかになるのだろうか。
ふっと出た息にジルがことんと右肩に頭を寄せてくれた。
今はミドの用事を考えましょう。それにふたりで買い物に出るの、久しぶりで何だか嬉しい…。
少女の頃の様に朗らかな君を久しぶりに見た。あの国において氷の意思で因縁をマザークリスタルドレイクブレス破壊と共に断った後は人らしく生きようと決めた君がここにいる。
そして未だシヴァのドミナントであり、俺と共に戦い続ける—。
ゆっくりとまた息を吐き、そっと微笑んで“ああ”と君に応える。
シドから受け継いだものをいつだって支えて—上手くいかない辛い現実が続いた時には—その苦しさもお互いに吐露し合いそれを受け止めながら。
世界が魔法による理(ルール)に敷かれている以上、そこからの変化と逸脱は大きな痛みとそれを望まないヴァリスゼアの大多数の人々から責任が問われる。罪人だと罵られたとしても、人が人として生きていく世界を創り出す為に。
(ガブも行きたがっていたのに、良いの?)
(俺たちドミナントの方が相応しいからな)
—なあクライヴ、ドミナントと人はどう違う?
—私は人でありたいの、クライヴ。
違和感がなかった訳ではない。
だからこそ、私は人らしく過ごせているかしらと思い出話に花を咲かせて。
そして今目の前で買い物を楽しんでいる君へそう出来ているのが人らしく過ごせている証だろうと告げたのだ。
シヴァのドミナントとしての氷の意思ごと溶かそうと君へと踏み込んで。
己の内に灯るフェニックスのナイトとして宿った炎の想いを全て君へと注ぐと決めたのは。君の目の前にいる男は人ではなく運命(さだめ)として生まれて。
そして君に人であって欲しいと心の奥底から、人としてこの運命に打ち勝つと誓いと共に力強く抱き合い言葉だけでは到底届けられない想いをお互いの高まる息遣いと共に絡めあっていく。
波がゆらゆらと寄せる音と、髪を揺らす潮風と。
ヴァリスゼアのどこからでも見られる月は綺麗で。
君は吐息と共にそっとメティアを見つめていた。俺は吐息と共にここに居ると優しく君の頬に触れていく。
互いにあるものを確かに見つめて。そうして補い合い、辿り着けた。