それもごく自然なこと
望郷組(クライヴ・ジョシュア・ジルの3人をこう呼んでいます)。
離れている期間の方が長かったのに自然体で行動出来る3人。
拠点のリーダーであり2代目シドでもあるクライヴの部屋にノックして入ってきたジルもその暖かな空間に口元が綻ぶ。彼女自身も今の拠点にて過ごす内に表情と感情が豊かになっており良い傾向が続いている。
険しく厳しい道筋を歩みながらクライヴの弟であるジョシュアと再会し、彼が目を覚まして改めて自分たちが置かれている現状については話し合いそのことを重く受け止めている。それでもまたこれからは一緒にいられるのだという事実が3人とも素直に嬉しい訳で。
ヨーテと呼ばれるジョシュアの従者と合流する為に再びダルメキアの地を踏むことになる運びとなっていた。
準備を怠ることなく出発だとその言葉に特段子供時代のような扱いではなく、これからは共に歩んで行けるのだと確信を得た弟は2代目シドであり拠点のリーダーでもある今の兄の部屋をざっと眺めて何が何処にあるのか、そして事を運ぶ時にはまず何を行なうべきなのか。頭と心の中で声には出さないあれこれと判断を下していた。
すぐ傍にはトルガル。尻尾をゆっくり振りながら彼らの様子をじっと眺めている。
インビンシブル拠点内でここにいる皆がそれぞれ体の肢体のように働いてチームを形成している。
かつてのシドの拠点のように灯りを灯すのも蝋燭に火打石を用いたりして魔法に頼ることはせず。拠点内に存在している黒の一帯の水を濾過し飲み水に変えているミドの装置もそのひとつだ。ブラックソーンのふいごもまた。戦いが終わったら各地に広めるつもりだと兄から聞いた。
「ジョシュア、お前もヴァリスゼア各地を見て回ったと話していたな。飲み水はまずここから運び出しているのだがブラックソーンが新しい皮なめしで水袋を用意すると言ってくれた。是非受け取ってくれ」
机の上に置かれた手紙や地図、そして書類の内容に目を通しつつクライヴが話しかける。
「分かったよ。ダルメキアの水脈は実際に目にして本でも確認はしているけれど、この空の下ではいつ雨が降るか今では分からないしね。道案内も確実な方向で行こう。フーゴの部下たちと遭遇する可能性もある。兄さんも気をつけて」
兄のこうした真面目な面は変わっていないなとジョシュアもしっかりと真剣に答える。
「ああ、分かっている。協力者であるルボルやエルとテオも紹介したい所だが…今回は控えておいた方が良さそうだ。教団に関して俺は殆ど知らないことばかりだ。道中でジルと共に詳しく話してもらえるか」
「…うん、分かった」
はきはきと答えていた直前のやり取りとは異なり引っかかる間を置いたがジョシュアが更に続ける。
顔を見るとほころんでいる。トルガルの両頬を優しく撫でながら。
「…何というか、変わらないよね。昔から僕らはこうだった」
ロザリスに生まれ年が5つ離れていた事とドミナントとその盾としてそれぞれの役割があった為に教えられ方や周囲の貴族たちからの扱われ方も違ってはいた。
そうした中でも国や民の事を話し合う日々は確かに重ねていた。今はそれがベアラーである彼らを通して―このヴァリスゼア大陸全体に蔓延る認識と黒の一帯の元凶であるマザークリスタルへと変わった。ごく普通の人でありたい、という願いは昔も今も形は違えども心の中で抱きながら。
「未だニンジンも駄目だしな」
ダルメキアのダリミルにてすれ違い会えなかったやるせなさを思い出し、今はもうここに居てくれるのだと自然と笑みが浮かびそう伝えると。
「む。兄さんはエールが大丈夫になったけど、甘いものは変わらず苦手じゃないか」
忘れている訳ではないがジョシュアも大概頑固な面がある。
トルガルの頭をぽんと撫で終えてつかつかと歩み寄ってきた。
「いや、それはお前が好きかと思って取っておいて「そういう所も変わっていないよね、すぐ自分を後回しにしようとする」
責めているというよりしっかりと指摘しておかなければという考えから来ているのだろう、なかなかの気迫を感じる弟にどう答えるべきか頭の回転を速めている内に。
扉のノック音が響いてジルがお邪魔してもいいかしらという声と共に顔を見合わせてお互いにまた笑みを浮かべると彼女を招いた。
ジルは3人分のパンと果実と水差しが入った角型の籠を手にしていた。クライヴも懐からトルガルのおやつを取り出し軽めの食事を取ることに決めた。
「遺跡に行った時も、こうして3人でお菓子を食べたりしたね」
あの頃はマザークリスタルの真実など何も知らず、春先の―それは雪解け水や芽生えたばかりの緑、そして色とりどりの花も咲き始めた頃に出かけられたことがただ純粋に楽しく嬉しかった。
外でジョシュアが食事をすることにアナベラは良い顔をしなかったので遺跡を見回ったらすぐに戻るという条件で―城下街にても買い物のすることはその日は避けてジルが調理場の侍女たちと共にこっそりとつくった小麦と砂糖と水だけで焼いた菓子をそっと広げながら眩しい日差しと突き抜けた青空とさわやかな風が舞い、青草と花の香、雪解けで冷たい水の感触を楽しみながらのんびりと過ごしていた。
「これからはタブアンドクラウンで、だな」
「ジョシュア、タルヤがしっかりと薬を服用するように心配していたわ」
ふたりは変わらず自分のことを話題に上げて。離れていた長い間も想ってくれていたのだと実感した。
このあたたかさは失われない。失いたくない。
変わっていない。だからこそ生きていると信じて弱い身体と弱い心だったとしても動き出して。今またこうしてここに居られる。
先のことはまだ不安定で混沌の世界へとこのヴァリスゼア大陸は変わる。たとえ理を乗り越えられたとしてもその先の未来は予測できない。誰であっても。積み上げて来た歴史からは決して読み取れない不確実な時代へと移るのだ。
ただ、あいつの思い通りになるのなら確実に分かっている現実がある。あの時に一緒にいられた思い出も。今この時も。同時に無に還る。
あの日のようにまた引き裂かれるのだ。
そうなってしまったら、今度はもうない。もう二度と―。
真実にたどり着いた時、胸の内に静かでそれでいて煮えたぎるような怒りの炎が宿ったあの感覚は忘れない。だからこそドミナントでいるし、兄さんの弟でいられるのだ。
この人の弟であること、それはごく自然なことだ。フェニックスを宿す身として生まれたあの日から。
お前の盾になろう、そう決めたのだとひとりテラスで遠くを見つめていたあの背中を見つめて。
そっと行こうよ、と手を取ったときだって。会えなかったこの18年間も。今だってそうだ。
残ったひとつの果実をジルが小さなナイフで3人分に分けてくれたのでそれぞれに分け合う。
遺跡に遊びに行ったとき何を言う訳でもなくごく自然とこうしたことをしてきたのですっと受け取った。
「タルヤが約束守らないと若様にニンジン突っ込むわよと釘をさしておいてちょうだいねと言われたのよ」
「今さっきその話をしていたんだ」
「それと、クライヴにはまた怪我が治らない内に飛び出したらベッドへ縛り付けるとも」
「本当に変わっていないね、兄さん。ケアルガどんどん唱えておく準備をしておかないと」
「おい、止せ。下手に負担を掛けようとするな」
おまけ(?)
距離感が近いのはクライヴとジルもそうなのですが。
ジョシュアとトルガルから見たらこんな感じ?
ダブルヒロイン(ん?)との距離感
少年期―。
クライヴ「アンブロシア。今日も白銀かと思うほど綺麗だな。良い子でいてくれてありがとう」
(頬をすりすりしながら)アンブロシア「キュイ…」
(トルガルを抱っこしながら)ジル「・・・・・」
ジョシュア「雛として孵ってから兄さんがずっと世話していたから…ね、ジル」
壮年期―。
(クライヴが近づいて来たので頭をこつんとしている)アンブロシア「キュイ…」
クライヴ「調子は良さそうだな。今日のモブハントは強敵だ。気を引き締めて行こう」
(トルガルに抱き着きながら)ジル「あんなに近づいて…」
トルガル🐺「ワフッ」(でもふたりの距離感もあんな感じだし‥‥)
ジョシュア(何事も無いようにお菓子や飲み水半分こし合っているしなあ‥‥
僕が居るとふたりともすぐ僕を優先しようとするし‥‥)
望郷組(クライヴ・ジョシュア・ジルの3人をこう呼んでいます)。
離れている期間の方が長かったのに自然体で行動出来る3人。
拠点のリーダーであり2代目シドでもあるクライヴの部屋にノックして入ってきたジルもその暖かな空間に口元が綻ぶ。彼女自身も今の拠点にて過ごす内に表情と感情が豊かになっており良い傾向が続いている。
険しく厳しい道筋を歩みながらクライヴの弟であるジョシュアと再会し、彼が目を覚まして改めて自分たちが置かれている現状については話し合いそのことを重く受け止めている。それでもまたこれからは一緒にいられるのだという事実が3人とも素直に嬉しい訳で。
ヨーテと呼ばれるジョシュアの従者と合流する為に再びダルメキアの地を踏むことになる運びとなっていた。
準備を怠ることなく出発だとその言葉に特段子供時代のような扱いではなく、これからは共に歩んで行けるのだと確信を得た弟は2代目シドであり拠点のリーダーでもある今の兄の部屋をざっと眺めて何が何処にあるのか、そして事を運ぶ時にはまず何を行なうべきなのか。頭と心の中で声には出さないあれこれと判断を下していた。
すぐ傍にはトルガル。尻尾をゆっくり振りながら彼らの様子をじっと眺めている。
インビンシブル拠点内でここにいる皆がそれぞれ体の肢体のように働いてチームを形成している。
かつてのシドの拠点のように灯りを灯すのも蝋燭に火打石を用いたりして魔法に頼ることはせず。拠点内に存在している黒の一帯の水を濾過し飲み水に変えているミドの装置もそのひとつだ。ブラックソーンのふいごもまた。戦いが終わったら各地に広めるつもりだと兄から聞いた。
「ジョシュア、お前もヴァリスゼア各地を見て回ったと話していたな。飲み水はまずここから運び出しているのだがブラックソーンが新しい皮なめしで水袋を用意すると言ってくれた。是非受け取ってくれ」
机の上に置かれた手紙や地図、そして書類の内容に目を通しつつクライヴが話しかける。
「分かったよ。ダルメキアの水脈は実際に目にして本でも確認はしているけれど、この空の下ではいつ雨が降るか今では分からないしね。道案内も確実な方向で行こう。フーゴの部下たちと遭遇する可能性もある。兄さんも気をつけて」
兄のこうした真面目な面は変わっていないなとジョシュアもしっかりと真剣に答える。
「ああ、分かっている。協力者であるルボルやエルとテオも紹介したい所だが…今回は控えておいた方が良さそうだ。教団に関して俺は殆ど知らないことばかりだ。道中でジルと共に詳しく話してもらえるか」
「…うん、分かった」
はきはきと答えていた直前のやり取りとは異なり引っかかる間を置いたがジョシュアが更に続ける。
顔を見るとほころんでいる。トルガルの両頬を優しく撫でながら。
「…何というか、変わらないよね。昔から僕らはこうだった」
ロザリスに生まれ年が5つ離れていた事とドミナントとその盾としてそれぞれの役割があった為に教えられ方や周囲の貴族たちからの扱われ方も違ってはいた。
そうした中でも国や民の事を話し合う日々は確かに重ねていた。今はそれがベアラーである彼らを通して―このヴァリスゼア大陸全体に蔓延る認識と黒の一帯の元凶であるマザークリスタルへと変わった。ごく普通の人でありたい、という願いは昔も今も形は違えども心の中で抱きながら。
「未だニンジンも駄目だしな」
ダルメキアのダリミルにてすれ違い会えなかったやるせなさを思い出し、今はもうここに居てくれるのだと自然と笑みが浮かびそう伝えると。
「む。兄さんはエールが大丈夫になったけど、甘いものは変わらず苦手じゃないか」
忘れている訳ではないがジョシュアも大概頑固な面がある。
トルガルの頭をぽんと撫で終えてつかつかと歩み寄ってきた。
「いや、それはお前が好きかと思って取っておいて「そういう所も変わっていないよね、すぐ自分を後回しにしようとする」
責めているというよりしっかりと指摘しておかなければという考えから来ているのだろう、なかなかの気迫を感じる弟にどう答えるべきか頭の回転を速めている内に。
扉のノック音が響いてジルがお邪魔してもいいかしらという声と共に顔を見合わせてお互いにまた笑みを浮かべると彼女を招いた。
ジルは3人分のパンと果実と水差しが入った角型の籠を手にしていた。クライヴも懐からトルガルのおやつを取り出し軽めの食事を取ることに決めた。
「遺跡に行った時も、こうして3人でお菓子を食べたりしたね」
あの頃はマザークリスタルの真実など何も知らず、春先の―それは雪解け水や芽生えたばかりの緑、そして色とりどりの花も咲き始めた頃に出かけられたことがただ純粋に楽しく嬉しかった。
外でジョシュアが食事をすることにアナベラは良い顔をしなかったので遺跡を見回ったらすぐに戻るという条件で―城下街にても買い物のすることはその日は避けてジルが調理場の侍女たちと共にこっそりとつくった小麦と砂糖と水だけで焼いた菓子をそっと広げながら眩しい日差しと突き抜けた青空とさわやかな風が舞い、青草と花の香、雪解けで冷たい水の感触を楽しみながらのんびりと過ごしていた。
「これからはタブアンドクラウンで、だな」
「ジョシュア、タルヤがしっかりと薬を服用するように心配していたわ」
ふたりは変わらず自分のことを話題に上げて。離れていた長い間も想ってくれていたのだと実感した。
このあたたかさは失われない。失いたくない。
変わっていない。だからこそ生きていると信じて弱い身体と弱い心だったとしても動き出して。今またこうしてここに居られる。
先のことはまだ不安定で混沌の世界へとこのヴァリスゼア大陸は変わる。たとえ理を乗り越えられたとしてもその先の未来は予測できない。誰であっても。積み上げて来た歴史からは決して読み取れない不確実な時代へと移るのだ。
ただ、あいつの思い通りになるのなら確実に分かっている現実がある。あの時に一緒にいられた思い出も。今この時も。同時に無に還る。
あの日のようにまた引き裂かれるのだ。
そうなってしまったら、今度はもうない。もう二度と―。
真実にたどり着いた時、胸の内に静かでそれでいて煮えたぎるような怒りの炎が宿ったあの感覚は忘れない。だからこそドミナントでいるし、兄さんの弟でいられるのだ。
この人の弟であること、それはごく自然なことだ。フェニックスを宿す身として生まれたあの日から。
お前の盾になろう、そう決めたのだとひとりテラスで遠くを見つめていたあの背中を見つめて。
そっと行こうよ、と手を取ったときだって。会えなかったこの18年間も。今だってそうだ。
残ったひとつの果実をジルが小さなナイフで3人分に分けてくれたのでそれぞれに分け合う。
遺跡に遊びに行ったとき何を言う訳でもなくごく自然とこうしたことをしてきたのですっと受け取った。
「タルヤが約束守らないと若様にニンジン突っ込むわよと釘をさしておいてちょうだいねと言われたのよ」
「今さっきその話をしていたんだ」
「それと、クライヴにはまた怪我が治らない内に飛び出したらベッドへ縛り付けるとも」
「本当に変わっていないね、兄さん。ケアルガどんどん唱えておく準備をしておかないと」
「おい、止せ。下手に負担を掛けようとするな」
おまけ(?)
距離感が近いのはクライヴとジルもそうなのですが。
ジョシュアとトルガルから見たらこんな感じ?
ダブルヒロイン(ん?)との距離感
少年期―。
クライヴ「アンブロシア。今日も白銀かと思うほど綺麗だな。良い子でいてくれてありがとう」
(頬をすりすりしながら)アンブロシア「キュイ…」
(トルガルを抱っこしながら)ジル「・・・・・」
ジョシュア「雛として孵ってから兄さんがずっと世話していたから…ね、ジル」
壮年期―。
(クライヴが近づいて来たので頭をこつんとしている)アンブロシア「キュイ…」
クライヴ「調子は良さそうだな。今日のモブハントは強敵だ。気を引き締めて行こう」
(トルガルに抱き着きながら)ジル「あんなに近づいて…」
トルガル🐺「ワフッ」(でもふたりの距離感もあんな感じだし‥‥)
ジョシュア(何事も無いようにお菓子や飲み水半分こし合っているしなあ‥‥
僕が居るとふたりともすぐ僕を優先しようとするし‥‥)